令和2年実施(令和元年補正)ものづくり補助金がスタート!
3月に募集が開始されると噂されていた令和2年実施(令和元年補正予算)ものづくり補助金(正式名称、令和元年補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)の募集が開始されました!
第一次締め切りは2020年3月31日の17時となっています。時間がありませんので、一次申請をお考えの事業者様はお急ぎください!
全国中小企業団体中央会発表の公募要領(2020年3月10日発表)
今年は以前から噂されていた通り、公募要領や審査項目、申請方法が大きくリニューアルされました。詳しく見てみましょう!
大きな変更点は以下の通りです。具体的には補助率(補助金の支給率)、申請の方法、申請者に成果が求められる点、審査の項目などですね。
補助金額と補助率に一部変更があります!
補助金の上限額は消費税抜きで1,000万円となります。基本的な補助率(補助金の支給率)は1/2となっています。つまり2,000万円税抜きの設備等の購入で1,000万円満額が得られる計算です。例年、指定された認定制度(例えば昨年では先端設備等導入計画)を取得していれば2/3まで補助率がアップしましたが、今年は上限アップの措置はなさそうです。なお、過去には申請可能だった、小規模事業者の試作開発については対象外となっています。
ただし、小規模事業者は2/3まで補助されます。例年小規模事業者は2/3、ただし上限は税抜き500万円となっていましたが、その指定は無いようですね。小規模な会社は補助率がアップするので今回のものづくり補助金は申請しやすいと言えます。小規模な企業とは、製造業、その他業種、旅館業、娯楽業で常時雇用する従業員が20名以下、卸売業・小売業・サービス業では従業員数が5名以下(ともに会社役員を除く)場合を言います。
通年募集に変更となりました!採択発表は4月末!
第一次公募の締め切りは2020年3月31日の17時までとなっています。第一次締め切りの採択結果発表は2020年4月末を予定しているようです。採択された企業は、採択結果発表後に交付の申請作業を行い、それ以降に機械の購入や契約、支払いが可能となります。3月申請の場合、おそらく4月結果発表、5月交付申請となりますので、早ければ6月には契約、支払い、機械の購入が可能になります。
なお、通年募集となりましたので、第二回目以降は2020年5月(第二次)、8月(第三次)、11月(第四次)、2021年2月(第五次)と募集が続く見込みです。ただし、例年第一次や第二次の方が採択率が高くなる傾向にあるようです。再チャレンジもできるので、できれば第二次の5月申請には間に合わせたいところですね。
申請方法が大幅に変更となり、電子申請となります!
昨年から導入された電子申請ですが、こちらは当初の予定通り、GビズIDプライムを取得する必要があります。当初は補助金申請システムJグランツを使うものと予定されていたようですが、公募要領に記載がないところを見ると、独自のシステムで申請する可能性が高いですね。詳しくは電子申請マニュアル(2020年3月24日に公開予定)をご確認ください。なお、採択後の交付申請以降はJグランツを使うようなので、今から目を通しておいた方が良いかもしれませんね!
なお、GビズIDプライムの取得には2週間程度最低でもかかります。本日の公募発表を受け、申請が殺到すると考えられますので、場合によっては3週間くらいかかるかもしれません。つまり3月申請をお考えの事業者さまは、できれば3月10日本日、遅くとも今週中には登録申請を行っておく必要があり、それができない場合は物理的に3月申請はできないことになります。当社でも今週中にGビズIDプライムを取得されていないお客様に関しては、3月申請は見送っていただく形となりますのでご了承ください。
主な変更点は補助金返納制度の導入や減点措置など
この他、主な変更点についての説明もあります。以下は公募要領の抜粋です。
例えば今までは賃上げすると表明しておきながら、実際にできなかった場合でも補助金を返納することはありませんでした。しかし、今回からは要件が未達の場合は一部の補助金を返納することになっています。なかなか厳しい措置ですね。
またコロナウイルスの影響を受け、例えば中国生産を行なっていた企業が、国内生産に切り替える場合など、急を要する場合には優先採択(4月の採択結果を待たずに)すると記載されています。
この他、過去3年以内に採択を受けた事業者は減点措置が取られます。この減点がどのくらいの点数になるかは我々もわかりません。過去3年以内の採択企業は慎重に、また完成度の高い事業計画の策定が求められます。逆に言えば、今年初めてものづくり補助金にチャレンジする企業は大チャンス!ということになりますね。
補助事業期間(機械の購入時期等)が柔軟に対応可能!
これは企業にとっては嬉しい知らせです。今までは採択後の補助対象期間(設備の導入時期等)が、12月31日や1月31日までと決められていました。例えば秋に採択されると翌年の1月31日までに機械を導入、3ヶ月から4ヶ月程度で設備導入から支払いまで終わらせる必要がありました。今回からは交付決定後10ヶ月以内(採択決定からおおよそ12ヶ月以内)に柔軟に対応が可能となりました。
事業計画の要件が厳密になります。
以下は公募要領からの抜粋で、事業計画の必要要件になります。
事業計画において、①給与総支給額を年率平均1.5%増加(例えば3年計画なら4.5%増加)、②事業場内最低賃金プラス30円を維持、③付加価値額(営業利益+減価償却費+人件費)を年率平均3%増加、という3つの要件を満たすことが求められています。
注意が必要なのは、これらの条件を満たさない場合、一部補助金を返納しなければならないということです。さらに賃上げ(総支給額アップ)の取り組みを従業員に表明する必要があり、知らしめていない場合は補助金の返還が求められます。必ず従業員に周知し、実際に総支給額をアップする必要があるので注意が必要です!
また当社にもよく問い合わせがあるのですが、応募時点で事業の実施場所(機械の設置場所)が確保できていない場合は申請ができませんので注意が必要です。ただし、建設中や土地を確保(賃借契約書等)している場合は大丈夫となっています。
認定支援機関の確認が不要になりました
今までは認定支援機関と呼ばれる支援機関、例えば金融機関、税理士、中小企業診断士、コンサルティング会社の確認書(事業の実行可能性などを示す書類)の提出が必ず必要でした。今回からは、それらの認定支援機関による確認書は不要となりました。金融機関に認定支援機関を依頼すると、資金調達力を審査員にアピールできるため需要なポイントでもありましたが、今回からは確認書の提出は不要となっています。
審査基準もほぼ例年通りとなっています。主に事業の革新性や実現可能性が問われる内容となっています。審査項目の詳しい解説はまた次の機会にご説明しますが、大きな変更点のみ記載しておきます。
変更点1)事業化に向けて、市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット、および市場規模が明確か。クラウドファウンディング等を活用し、市場ニーズの有無を検証できているか。
ここでのポイントは、市場ニーズの有無を検証できているかどうか。つまり市場調査や既にニーズがあることを証明する必要があります。具体的に取引先から要望が寄せられていることはもちろん、それらを調査分析している証拠を示せればさらに点数がアップするものと考えられます。
変更点2)地域の特性を生かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果 を及ぼすことにより地域の経済成長を力強く牽引する事業を積極的に展開することが期待 できるか。
例年と同じように書かれているようで、微妙にニュアンスが変化しています。まず第一に地域の特性を生かしていること、地域に経済波及効果を及ぼしていること、地域経済成長を牽引するような展開が期待できる内容になっていることが求められます。
変更点3)ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格 な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有 しているか。
グローバル展開(海外への展開など)や厳格な品質管理など、差別化ができている事業計画は点数が高く、またニッチ市場のトップを目指すような取り組みが高評価となります。
変更点3)バイオマス素材を用いた資源循環型プラスチック製品の開発等、環境に配慮した持続可 能な事業計画となっているか。
環境に配慮した取り組み、つまりこれは今流行りのSDGsを意識した取り組みが評価されると考えて良いでしょう。
変更点4)成長性加点:経営革新計画の承認取得(見込み含む)企業
今までは経営力向上計画や先端設備等導入計画など簡易な計画でも成長性加点(採択に有利になる加点)が得られましたが、今回からは経営革新計画の認定企業のみが有利となる制度に変更となりました。経営革新計画は取得まで2〜3ヶ月かかるため、3月申請では間に合わないと思われます。申請中でも加点は得られますが、認定通知書に記載される「受理日」が記載されます。この受理日が申請日前である必要があり、その日以降に受理されていた場合や未提出だった場合は採択が取り消しとなります。3月に申請をお考えの事業者様は無理にこの加点を狙わない方が賢明と考えます。
変更点4)小規模事業者または創業5年以内の企業
例えば製造業で従業員20名以下の企業は加点が得られる上に、補助率が2/3となるので非常に優遇されています。また創業者を支援する意味合いから、創業5年未満の企業も有利となっています。
変更点5)事業継続力強化計画の認定取得など災害加点の実施
災害対策に積極的に取り組み、事業継続力強化計画という経済産業省の認定を受けた(または取得予定の)企業は審査場有利になります。また令和元年台風19号で激甚災害地域に指定された場所に位置する企業、コロナウイルスの影響を受けて、その対応のために補助事業を行う企業は加点となります。事業継続力強化計画の加点は、採択レベル企業のほぼ全てが認定を取得すると考えられるため、必ず認定または提出しておく必要があります。
変更点6)賃上げ(給与総支給額アップ)の取り組み
これは毎年1%程度の総支給アップを行うと加点が得られましたが、今年から非常に厳しくなっています。具体的には①事業計画内において年率平均2%アップならびに地域別最低賃金60円、②年率平均3%アップならびに最低賃金90円、の企業を加点するとあります。ポイントは賃上げ率が「年率平均」になっている点で、例えば3年の計画を提出する場合は6%または9%の総支給額アップが必要ということです。従業員が多い企業にとっては非常に厳しい加点となりますが、逆に言えば、従業員が少ない企業でこの加点が取れれば、採択率は大幅にアップするものと考えられます。
今回は本日(2020年3月10日)に発表された公募要領を元に分析してみました。いかがでしょうか。様々な変更点に対応することが求められています。申請を検討されている企業様は、この公募要領をよく読んで分析していただきたいと思います。もちろん、採択率を極限まで高めたい会社様は気軽にご相談いただければと思います。
【執筆者のご紹介】
補助金支援コンサルタント・事業計画策定エキスパート・中小企業診断士 姫田 光太
平成29年補正予算ものづくり補助金では8連勝、平成30年度補正予算ものづくり補助金では11連勝、平成30年度補正予算ものづくり補助金2次公募では3連勝、ものづくり補助金の採択実績は平成28年から25連勝中。このほか、小規模事業者持続化補助金11連勝、IT補助金では30件中28件採択、合計採択数は64件(2018〜2019年実績)。平成29年度補正予算(平成30年実施)経済産業省系の補助金支援の採択率は100%。ものづくり補助金採択率100%。経営者の想いを伝える事業計画づくりがモットーの補助金申請支援コンサルタント。